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こんにちは。西麻布 Personal Training Studio BUDDY の齋藤くる美です。
スポーツをしている方からよく聞く悩みがあります。
「体幹を鍛えているのに軸が安定しない」
「フォームが崩れやすい」
「技術は理解しているのに身体がついていかない」
こうした悩みは、多くの場合「筋力不足」だと思われがちです。
ですが原因はそこではないケースが多いです。
問題になっているのは、スタビリティ(安定性)です。
スタビリティは「筋力」とは別物
スタビリティという言葉を聞くと、
腹筋を強くする、筋トレをする、といったイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、スタビリティは単なる筋力ではありません。
神経と筋肉が協調し、姿勢や動作を崩さずに保ち、必要なときに立て直す能力のことです。
スポーツ動作では、常に前後・左右・上下、さまざまな方向から力が加わります。
その力を一度受け止め、姿勢を保ったまま、次の動きへと変換していく。
この「中心で起きている仕事」こそが、スタビリティです。
力があるのに、パフォーマンスに出ない理由
スタビリティが不足していると、どうなるか。
せっかく下半身で生み出した力が、体幹で受け止めきれずに逃げてしまう。
軸が流れ、姿勢が乱れ、フォームが安定しない。
本人は「力を出している」「ちゃんと動いている」感覚があるのに、
結果としてパフォーマンスに反映されません。
これは、エンジンは強いのに、車体が不安定な状態に似ています。
どれだけアクセルを踏んでも、まっすぐ速くは走れません。
スタビリティと腰痛の関係
このスタビリティの低下は、スポーツだけでなく、ケガとも深く関係しています。
腰痛を抱える人では、
腹横筋や内腹斜筋、多裂筋といった深層筋の働きが弱くなっていることが多く報告されています。
また、体幹の安定性を高めるリハビリを行うことで、腰痛や下肢痛の再発が減り、パフォーマンス指標も改善することが分かっています。
スタビリティは、競技力の土台であり、同時に身体を守る仕組みでもあるのです。
スタビリティの善し悪し決める2つの要素
スタビリティは大きく2つの要素で成り立ちます。
● 体幹を“固定する感覚”
静的な安定性(止まった姿勢の安定)と、動的な安定性(動きながらの安定)の両方が重要です。まずは静的な安定性を保ち、さらにスポーツの動きの中で姿勢が乱れたり、ブレたりしない動的な安定性が求められます。
● 体幹の筋力
体幹の筋力は「エンジン」に相当します。最大筋力が高まれば、動作速度が上がりスピーディーにより力強く体幹を動かすことが可能となります。
この2つが噛み合って初めて、複雑な動作の中でも体幹を最大限に働かせることができます。
前編まとめ
スタビリティとは、
“身体の中心を守りながら動き続けるための能力” です。
筋力だけでは成立せず、「固定する感覚」と「力を出す能力」が揃って初めて、
技術は安定して再現されるようになります。
次回の後編では、このスタビリティがどのような構造で成り立っているのかを、
「3つの層」という視点から解説していきます。